2012年12月26日水曜日

夢・未来へ〜あるバレエ少女のこと

早いものでもう年の瀬、あと数日で新年を迎えます。
先日私の息子が通う学校の親子揃っての恒例クリスマスパーティがあり、私も参加してきました。
因みにその学校の6年生13人全員がハナ10周年の記念公演に出演し、観客の大声援の中韓国を代表するBBOYチームのラストフォーワンと一緒に歌とストリートダンスを披露し喝采を浴びました。

そして先日のパーティの席で、公演に出演した小学6年生のある少女のお母さんからとても嬉しくありがたい話しを聞くことが出来ました。
あの公演での体験がその少女にとって大きな刺激になっているというのです。そしてあの公演以降、娘がとても変わったというのです。
今回はその少女に纏わるエピソードをご紹介しようと思います。

その少女はどちらかというと自分が好きなことと嫌いなことがはっきりしていて、嫌なことに対しては明確に嫌という態度を示す子です。勉強は苦手です。うちの息子も含めてクラスに4人ほど勉強の苦手な子がいて、以前から担任の先生に「クアトロ4人組」と呼ばれています。いつも先生と一緒に居残り授業(ナマコンブ)を楽しくやっている愉快なお子たちで、 その少女も一員です。だけど朝鮮舞踊の名手で今年の独舞の競演大会で1位を取るほどの素晴らしい才能の持ち主です。それからバスケットをやらせたらその瞬発力と長身を活かした動きでとてもかっこいい、大人が見てもちょっとクールなイメージの子です。

実はその少女は幼い頃からクラシックバレエをやっています。因みにそのお母さんもバレエの先生であり今も現役で踊っていらっしゃる方です。そのバレエアカデミーの発表会を一度拝見させていただいたことがあるのですが、親子揃ってテクニックも表現力もずば抜けていて、他の人たちに比べて華やかさが違うのです。
クラシックバレエの世界はよく解りませんが、それはそれは厳しく表現に於いても自由で解放された表現ではなく長年の歴史の中で継承した厳格なまでの形の美を重んじる芸術表現であることは解ります。その修練を幼い頃からしてきた少女にとって、今回の公演でのラストフォーワンとの共演はある意味でカルチャーショックだったのではないかと言うのです。BBOYのダンスというのはそれこそストリートの貧しい若者たちが好きなビートで自由奔放に踊ることで、自分の力強さを誇示し、自分を虐げようとする相手を威嚇するための闘いの手段として定着したのが始まりです。そこには貧しさ、差別や迫害という矛盾だらけの大人社会への反抗精神があるのです。そしてダンスを通して社会の矛盾から解き放たれる喜びを表現しているのです。ラストフォーワンも実は初期は韓国全羅道の若者たちから始まり、誰が見てもすごい実力でありながら中央であるソウルのこの手のダンス界からは異端扱いをされ相手にされなかったという話しを聞きました。そんな異端児たちが反骨精神で今では韓国を代表する世界的なダンスチームとなり、その活動もしっかりしたエンタテインメント界から街中でのパフォーマンスまで、それは華やかな彼らではありますが、彼らのパフォーマンスのあの迫力や力強さ、激しさ、そして何よりも自由闊達な開放感の根底にこのような反骨精神がしっかり組み込まれているのです。
そんな彼らのパフォーマンスを目にし、一緒にそのダンスの手ほどきを受け、あの感動のステージで一緒にストリートダンスを踊った幼いバレエ少女は、あの時、踊ることで心が解放される喜びを知ったのでした。踊ることが楽しくてしょうがないという素晴らしい体験をしたのです。それまで少女のダンスをずっと見てきたお母さんは、娘にバレエを教えながらもっと楽しんでいいんだよと常に言い聞かせてきたとのことでした。その少女がはじめて踊る喜びをこの公演で感じたのでした。お母さん曰くあの公演は少女にとっては宝物になったと思うと。練習の時もリハーサルの時も本番の時も、いつも「すごいよみんな!」といいながら暖かく優しく意気揚々と自分たちを引っ張ってくれたラストフォーワンのメンバーへの憧れも伴い、自分が踊ることへの嬉しさ、プライドが彼女を大きく成長させたようです。
もう一つお母さんの言葉の中で印象的な言葉があります。
以前から学校でやっている朝鮮舞踊のこと。少女は朝鮮舞踊をやっていく内にバレエの表現力が格段によくなったというのです。それだけ朝鮮舞踊の表現力は豊かだということを証明しているということでしょう。
そんな少女は来年3月に行われるバレエの国内のコンクールに自分から出ると決めたそうです。
自分が踊りたい、楽しみたい、その思いが少女の心を動かしています。
もうすぐ小学校を卒業する子供たち。そして自分から大きく成長していこうと前へ前へ進む子供たち。
お母さんの話を聞きながら、そんな眩しくプラウドな子供たちにエールを送りたいと感じました。

「夢・未来へ羽ばたく子供たちに」というハナの公演のコンセプトでしたが、この公演をきっかけとしたあまりに嬉しく有難いエピソードなので、本ブログに掲載させていただきました。
最初は公演のレポートで終わる予定でしたが、この公演企画が掲げたコンセプトを考えた時、ただの公演記録に止まらない、未来を担う子供たちをテーマにしたいい話しを、今後も継続して掲載出来ればと思います。そのようなエピソードをご存じの方の投稿は大歓迎です。
今後ともよろしくお願いします。

今年はこれで最後です。
どうぞ皆様、良いお年をお迎え下さい。


새해 복 많이 받으세요.


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